Everything Is Everything / Donny Hathaway

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01 Voices Inside (Everything Is Everything)
02 Je Vous Aime (I Love You)
03 I Believe To My Soul
04 Misty
05 Sugar Lee
06 Tryin' Times
07 Thank You Master (For My Soul)
08 The Ghetto
09 To Be Young, Gifted And Black
10 A Dream

ダニー・ハサウェイのデビュー盤を。
たぶんどこかの黒人ゲットーなんでしょう、ごみごみした街中で子供たちと遊ぶダニーの笑顔が印象的なジャケ写 。
そしてこの中に収められている彼のデビュー・ヒット曲が「The Ghetto」。
この曲、黒人以外のマイノリティの方も視野に入れていたのでしょうか、 強烈にラテン・フレイヴァの効いたコンガが全体を引っ張るようなつくりで、これまでのソウルとは全く違ったものになっています。
また、タイトルである「Everything Is Everything」は、前述したマーヴィン・ゲイの「What's Going On」のイントロで誰かが「Everything…」とつぶやいており、そういった面 で、他のアーティストに与えた影響も大きかったものと思われます。
とはいうものの、彼がニュー・ソウルの旗手たるゆえんはこのアルバムのラストを飾る「To Be Young,Gifted & Black」のタイトルそのまんまの人間だというところにありそうな気がしますが…。
ダニーはハワード大学卒の典型的な中産階級出身者でした。

Live / Donny Hathaway

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01 What's Goin' On
02 The Ghetto
03 Hey Girl
04 You've Got A Friend
05 Little Ghetto Boy
06 We're Still Friends
07 Jealous Guy
08 Voices Inside (Everything Is Everything)

70年代ニュー・ソウルの一方の旗手、ダニー・ハサウェイの大傑作。
のっけからマーヴィン・ゲイの「What's Going On」を大マジでカヴァー、今でいうならSMAPがライヴのオープニングにモー娘。(お、一発変換)の「Loveマシーン」を歌うほどのインパクトがあったものと思います(例えが違うか)。
とにかくお客さんのノリが抜群に良く、ダニーがピアノでイントロを弾き出すだけでワーキャーの大騒ぎ、1曲目の「What's Going On」では客席から「いぇー、ホワッツゴーインオーン!」の掛け声は飛ぶし、2曲目の「The Ghetto」では客席全員で「トーキンアバウタゲーットォー!」の大合唱、そしてハイライトの「You've Got A Friend」(キャロル・キングの名作。自身もロバータ・フラックとのデュエットでヒットを記録)のイントロでは客席から大歓声、そして曲中では全員で大合唱、背筋がゾクっとするほどの感動が味わえます。
そして「Little Ghetto Boy」中の「♪Everything has got to get better〜」というコーラスに当時の黒人達の思いが詰められているのではないかと思うのは僕だけでしょうか?
その他にもジョン・レノンの「Jealous Guy」をカヴァーしており、聴きやすい内容になっています。
ライヴ・アルバムとしてはもちろん、僕などが絶対覗き込めない黒人コミュニティのつながりの記録としても一級品の大変優れたアルバムだと思います。

Extension Of A Man / Donny Hathaway

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01 I Love The Lord;He Heard My Cry
02 Someday We'll All Be Free
03 Flying Easy
04 Valdez In The Country
05 I Love You More Than You'll Ever Know
06 Come Little Children
07 Love,Love,Love
08 The Slums
09 Magdalena
10 I Know It's You

オリジナルとしては、ダニー・ハサウェイ最後の作品。
オーケストラによる(1) がまず圧巻。
通常の黒人大衆音楽では考えられないオープニングで幕を開けるこの曲は二部構成になっており、一部では荘厳なイメージで曲進行し、二部では信仰の悦びを示し、また人種として前進する想いをマーチに託し、ゆるやかに(2)へのイントロへとつながっていきます。
この(2)こそが黒人音楽史上屈指の名曲であり、70年代に生まれた新しいかたちのゴスペルとして、歌いつがれる大傑作。
(3)では飛翔するイメージをうまく表現し、(6)ではファンク・リズムを用いて、いつになく激しく歌い込むダニー。
いつもは優しく包み込んでくれるような彼のヴォーカルしか知らない人には驚きかもしれません。
そして、エレクトリック・ピアノが珠のように転がる(7)で癒される人もいるかもしれません。
「The Ghetto」第二弾というべき(8)、古びた味わいの(9)、リオン・ウェアの(10)と駄 曲ナシ。
中産階級の家に生まれ、ハワード大学で音楽を学び、自分が持てる全てを注ぎ込んだと思しき彼の最高傑作の名にふさわしい珠玉 の一枚。
数年後にダニーは自殺してしまいますが、このアルバムに託された彼の思いは後年のシンガーやヒップホッパーズ達に伝わっていることでしょう。

These Songs For You, Live! / Donny Hathaway

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01 Flying Easy (Hathaway) 3:11
02 Valdez In The Country (Hathaway) 4:08
03 Someday We'll All Be Free (Hathaway, Howard) 5:30
04 You'Ve Got A Friend (King) 4:34
05 He Ain't Heavy, He's My Brother (Russell, Scott) 7:49
06 What's Goin' On (Benson, Cleveland, Gaye) 5:23
07 Yesterday (Lennon, Mccartney) 5:24
08 Superwoman (Wonder) 6:42
09 A Song For You 5:48
10 Sack Full Of Dreams 5:30
11 Little Ghetto Boy (Hathaway, Howard) 4:33
12 I Love You More Than You'll Ever Know 5:55
13 The Ghetto (Hathaway, Hutson) 12:22
14 Interview 2:58

ダニー・ハザウェイの未発表ライヴを編集したアルバム。
アトランティック・レコードの倉庫に眠っていたテープをライノ・レコードのスタッフが編集したものと思われます。
71年の大傑作「Live」から(4)(6)(11)(13)、死後発表された「In Concert」から(9)(10)(12)をセレクトしましたが、何といっても(1)(2)(3)(5)(7)(8)の未発表音源が聴きもの。
(2)の生々しくグルーヴィーなインストゥルメンタル・ナンバーから彼の最高傑作(3)につながる流れがサイコー。
彼の実質的なラスト・アルバム「Extension Of A Man 」からのライヴ演奏を聴くのは初めてなので、えらい感動しました。
既発表曲とのつなぎもよく考えられてて、細かいところまでよく神経が行き届いています。
さすが信頼のライノ・レコード。
カヴァーではスティーヴィー・ワンダーの(8)がダニーが弾くエレクトリック・ピアノの効果もあって幻想的な雰囲気を醸し出しています。
これがダニー・ハザウェイ初体験でも間違いナシ、オススメ盤です。
しかし、こういう盤って最近のBMRとかでちゃんとレビューするのかな。
若いソウル・ファンにニュー・クラシックスのシンガー達が手本にしてるのがこういう人なんだよっていうのをきちんと啓蒙するのもBMRみたいな雑誌の仕事だと思うけどなあ。

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