Sherrick / Sherrick

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1. Tell Me What It Is
2. Just Call
3. Baby I'm For Real
4. This Must Be Love
5. Do You Baby
6. All Because Of You
7. Let's Be Lovers Tonight
8. Lady You Are
9. Send For Me

80年代の黒人音楽を代表するシンガーと位置づけられているシンガー、シェリック唯一のアルバム。
残念ながら彼は99年に亡くなっており、結局これが唯一のアルバムとなってしまいました。
まずはオリジナルズの(3)がすばらしい。
もしO.V.ライトがもっと遅く生まれて、いわゆるブラコン風の音に親しんでたらこういう歌い方をするんじゃないかなあと思いました。
なんか両者のシンギング・スタイルというか、声にどこか共通するものを感じるんですよねえ。
彼の最高傑作(8)は曲の作りがかなり古くさいというか、「ソウル時代からの伝統」を感じます。
個人的には、たとえばテンプテーションズのアリ=オリー・ウッドソンあたりが歌ってもかなりサマになるんじゃないかと思いました。
特に出だしのあたりなんかライヴで聴いてみたいなあ。
マイケル・ストークスのプロデュースもこの時代ならではのコンテポラリーな風味をよく出しております。
どのみちすぐ廃盤になっちゃいそうな予感がするので、あるうち買うときや、の一枚。

…で、ここからは人様の悪口になってしまいます。
気分よく読んでいただいてる方々にはもうしわけないです。

このCDのライナーを書いたブラック・ミュージック評論の第一人者であるところのぴろしちゃん(仮名)のシェリックに対する書き方が気に入りません。
いや、基本的なトーンとしては褒めてるんですよ、シェリックを。
でもね、それは87年のオリジナル盤リリース時に彼自身が書いたライナーでのこと。
今回のリイシューにあたっての加筆がひどいの。

以下引用。

「…シェリックがアルバム一枚分の曲を録音、それをリリースする会社を捜しているとのいうのだ。数曲音も聞かせていただいたが、まあ彼だなというのはわかり、あるレコード会社を教えた。だが、残念ながらこれでは売るのは難しいと思われたのだろう。その話は立ち消えとなった。そして数年後の死。」
ここまではまだいいんですよ。
でもね、続く最後の一文が最悪。
「シェリックは永遠に聞く事はできなくなってしまったが、まあいいさ、『レイディ・ユー・アー』があるのだから。」

この人のこういう書き方は今に始まったことじゃなくて、USBDGのロバータ・フラックや「R&B、ソウルの世界」におけるEW&Fに対する辛辣な書き方も彼らが売れっ子だったからという意味でのことかなと思ったけど、今回は気分悪い。
シェリックはポップ・チャートはおろか、R&Bチャートでさえ爆発的に売れたわけじゃなくて、前述した人達みたいにメジャーで何枚もアルバムを出したわけでもない。
そんな彼だからこそ、二枚目のアルバムになるはずの曲を一生懸命録音してどうにかリリースしようと模索していたんでしょう。
もちろんワタクシみたいな一般黒人音楽ファンはその音源を聴いてないんで、どういう出来なのかはなんともいえませんけど、それでも「まあいいさ」という言い方ですますやりかたはねえんじゃねえかなあと。
ぴろしちゃんの評論した本はけっこう買いましたが、このライナーを読んで「じっさいあなたにとって黒人音楽って、そしてそれを体現してるシンガー達ってなんなの?」と思ってしまった瞬間でした。

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